ポルトガル語の発音が大昔の西洋言語はこんな感じか?中世のヨーロッパの歌謡?と感じさせる素朴な味わいの曲で、出会って以来、アルバムのこの曲のみ愛聴しています。JobimではないほうのAntonio Carlosと言われることもあるようですが、マリア・クレウーサMaria Creuzaと結婚、離婚しており、マリア・クレウーサが震える繊細な声で歌うヴァージョンもなかなかの聞き物で、彼女のファンという方がそちらをネットで紹介していました。
二つをよく聞き比べていますが、中世のトロヴァドール/トゥルヴァドゥールに関心があったせいか、こちらに寄ってしまいました。男性の声のほうが練習して覚えるにはよかったからでもあります。
曲を聞いて気に入れば普通は何語の歌詞でもまず原詞を入手し、その発音をカタカナで書き留めて繰り返し口に馴染ませるのですが、今回は原詞がないので、カタカナで書き取りました。日本語訳詞は内容が歪んでいることが多いので、できるだけ正確に理解し、自分で翻訳することにしているのですが、この曲は日本語訳から原詞の内容を想像するしかありません。
曲名は『詩人と毛布』と直訳されたものしか見ませんが、「毛布」はだれでもこれだけで何だこれはと疑問を覚えるでしょう。日本語の訳詞を読めば「庇護者/庇ってくれる人」を意味する隠喩で、「乙女/お姫様」を指すようですが、原語にある「覆う/包む」のような意味がまったくない「毛布」では日本人にとってはこれ以上ない違和感があります。
1曲だけのムービーは上がっておらず、これはアルバム全曲で、この曲は11:16から始まります。
*ブラジル人に歌詞を書き取ってもらいました。おかげでネットでひろった日本語訳をかなり修正できました。
O poeta e o cobertor詩人と庇護者
Toda a aflição de um poeta,
一人の詩人の悲しみのすべて
que dorme desperta,
かれは眠り、目を覚ます
negando ser um pecador
罪など犯していないと言いながら
Ar de uma donzela que desencantou
魔法が解けた乙女のように
魔法が解けた乙女のように
drama do poeta e o cobertor
詩人と庇護者のドラマ
um carroceu de desejos
欲望のメリーゴーランド
vidrava sem medo
怖くはないがふるえていた
nos braços do libertardor
解放者の腕にだかれて
解放者の腕にだかれて
Uma cerimonia dos seus ancestrais,
彼らの祖先たちの儀式
ela em triunfo despertou
それは誇らしく蘇った
Reis, bispos, peões e guardiões desta princesa,
王と僧正、兵士とこの王女の護衛たち
que lembrado forte,
彼らは強く求め
clamava a morte do trovador,
トロバドールに死刑をと叫んだ
Reis, cordas, prisões, decepções, de parte a parte,
王、ロープ、牢獄、失望、右からも左からも
nem se amedrontou,
彼はおそれていなかった
valeu a pena, foi por amor,
憐れむに値する。愛のためだったのだから
2016年、18年そして今年と3回Facebookにマリア・クレウーザのこの歌を投稿した者です。箱と曲さんのこちらの投稿は2015年ですので、文中に出てくるこの曲の紹介者は私ではなさそうですね。ということは、この曲を好きな人が少なくとも3人はいるってことになりますね❗️
返信削除私は、今年の投稿の直前に初めてこちらにお邪魔しました。恥ずかしながら、その時まで「毛布」の意味をわからずに聴いていました。この曲が作られた当時、ブラジルはまだ軍事独裁政権下にあったため、このような比喩的な作詞が多くなされた時代だったのかなと思っています。
それはさておき、今年の私の投稿を見られた日本のベテランのシャンソン歌手の小貫和子さんがこの曲を歌いたいとおっしゃられ、日本語の訳詞もつけられて来年2023年1月12日(19時〜)に上野の「池之端ライヴスペースQui (キ)」で初披露なされます。もちろん私も、この曲の紹介者としてお邪魔させていただきます。
この曲が、日本で日本語で歌われるなんてうれしいじゃないですか❣️ (平石 知之)