Romantzo : Haris Alexiou

 ハリス・アレクシーウのこの曲名は『ロマンス』という意味でしょうが、残念ながら歌詞が手元にありません。そのうち見つかるでしょう。

と2012/04/02に書いて公開してから10年近く経ち、今日2021/12/17にどなたかがギリシア語の歌詞をコメントに書き込んで下さいました。ありがとうございます。

分からないところがあちこちありますが、想像に想像を積み重ね、とりあえず暫定的な訳とし、これから修正していくことにします。どんなギリシア語のフォントがこのブログで使えるかも今は分からない状態ですが、新規公開にして楽しむことにします。


Το τσιγάρο του αναμμένο
και το βλέμμα κουρασμένο απ’ τον έρωτα
Το κορμί της ξεμουδιάζει
την ζωή ξαναδιαβάζει δίχως να ρωτά
煙草に火を着けてもらった
でも、視線は愛に倦んでいる
体の力が抜け
問われたわけではないが
人生の物語を読み返す
Έξω αρχίζει να βραδιάζει
στο ημίφως, σχεδιάζει την συνέχεια
του τραβάει το σεντόνι
η αγκαλιά της χαλαρώνει, δεν τον έχει πια
外は暗くなっていく
薄明かりの中,続きを考え
シーツを引き寄せる
彼女が腕の力を抜くと、もう彼はいない
Με νωχελικές κινήσεις
ξεμακραίνουν οι αισθήσεις της ψευδαίσθησης
κι ένα σήμα αρμονίας
στο ραντάρ της γυναικείας διαίσθησης
気だるく動くだけで
幻影を見る感覚はなくなってしまう
女性特有の感が
調和を取らせてくれる
Βάζει μπρος την καφετιέρα
κι ακούει απ’ τη μπανιέρα, το ρομάντζο της
του ζητάει να πάνε βόλτα
μπαίνει σπρώχνοντας την πόρτα, με το μπράτσο της
彼がコーヒーメーカーを前に置くと、
バスタブから彼女の歌うロマンスが聞こえる
彼女は散歩に出てくれるよう頼むと
腕でドアを押して中に入る
Σαν παλιό καλό κρασί
την αγάπη τους στραγγίζουνε και πίνουνε
κάποτε μόνοι θα μείνουνε, μα θα `χουν ζήσει
上質の古いワインのようになった愛を
彼らは飲んでそのグラスを空ける
いつか彼らは一人ぼっちになる
しかし、それで人生を生きたことになる
Κάνει χώρο στη ντουλάπα
κρύβει μια παλιά γραβάτα, δίχως νόημα
Θέλει η μοναξιά φασίνα
κι η καρδιά η μπαλαρίνα, φιλοδώρημα
クローゼットに空きができ
置いておく意味のない古いネクタイを片づける
孤独に浸りきり
バレリーナになった気でつま先立つ
Πώς τρελαίνονται οι αύρες
πώς να χειριστείς τους άντρες, που `ναι σαν παιδιά
Μ’ ένα τρόπο θεατρίνο
του ακουμπάει στο κομοδίνο, δυο χρυσά κλειδιά
オーラと見えたものがどのように馬鹿馬鹿しく見えてくるか
子ども好きな男たちをどう相手するか
お芝居をしているかのように
ナイトスタンドにもたれかかった二つの金色の鍵
Σαν παλιό καλό κρασί
την αγάπη τους στραγγίζουνε και πίνουνε
κάποτε μόνοι θα μείνουνε, μα θα θυμούνται
上質の古いワインのようになった愛を
彼らは飲んでそのグラスを空ける
いつか彼らは一人ぼっちになる
しかし、彼らは覚えている
Μια καινούργια ιστορία
μια ακόμη μαρτυρία, ότι ζήσανε
Κάπως έτσι αρχίζει πάντα
να γεννιέται μια μπαλάντα, που αγαπήσαμε
新しい物語
彼らの人生のもう一つの証言
このようにそれは始まる
私たちの愛するバラードとなって生まれ変わるために

Anna Moffo : Vocalise (Rachmaninov)

 アンナ・モッフォのものをもう一つ。これも何度も繰り返し聴いているラフマニノフのヴォカリーズです。

 



 

 

 

 

 

Anna Moffo : Una voce poco fa (Rossini : Il barbiere di Siviglia)

 ロッシーニ『セヴィリアの理髪師』の一場面ですが、上演されたステージの録画ではなく、テレビ番組の特別セットを使った録画のようですが、カメラワーク、編集が映画水準でかなり凝っています。最近まで知りませんでしたが、イタリア系アメリカ人のアンナ・モッフォ(1932〜2006)は歌手だけでなく、女優、司会者として活躍し、大変な人気を博したそうです。歌を聴いただけなら、それほど惹かれなかったでしょうが、画質のあまりよくないこの映像を見ながら聴くと、歌声がすばらしいだけでなく、動作、表情がほんとうにチャーミングで繰り返し見たくなります。細かな仕草、目の動きは歌詞に連動しいるので、映画の字幕のつもりで訳してみました。

 

Una voce poco fa (今の声は)

 Una voce poco fa
qui nel cor mi risuonò;
il mio cor ferito è già,
e Lindor fu che il piagò.
Sì, Lindoro mio sarà;
lo giurai, la vincerò.

今の声は
心に響いた
私の心はもうボロボロ
やったのはリンドーロ
こうなったら、リンドーロは私のものにするわ
そう誓う。勝つのは私よ

Il tutor ricuserà,
io l'ingegno aguzzerò,
alla fin s'accheterà
e contenta io resterò.

後見人は反対するでしょうね
でも、私は知恵を働かせて、
最後には彼を説得し
満足のゆく結果を得る

Io sono docile,
son rispettosa,
sono ubbidiente,
dolce, amorosa,
mi lascio reggere,
mi fo guidar.

私はおとなしく
敬いながら
言うことを聞く
優しく、愛情たっぷりに
言いたいことを言わせておき
意見を聞くわ

Ma se mi toccano
dov'è il mio debole,
sarò una vipera,
e cento trappole
prima di cedere
farò giocar.

でも 私の弱みに
もし触れでもしたら
意地悪になる
そして 百の罠をしかけて
参ったと言うまで
いじめてやる



シルエット・ロマンス : 来生たかお

 井上陽水は文法が変と感じられるくらい、ことばの使い方をずらせた違和感で効果を演出するのですが、来生えつこのポツポツとサイレントで繋ぐ作詞もすばらしい。

恋する女は夢見たがりの
いつもヒロイン つかの間の
鏡に向かってアイペンシルの
色を並べて迷うだけ


窓辺の憂い顔は 装う女心
茜色のシルエット


ああ あなたに 恋心ぬすまれて
もっとロマンス 私に仕掛けてきて
ああ あなたに 恋模様染められて
もっとロマンス ときめきを止めないで


あなたのくちびる 首すじかすめ
私の声も かすれてた


無意識にイヤリング 気づいたらはずしてた
重なりあうシルエット


ああ 抱きしめて 身動き出来ないほど
もっとロマンス 甘くだましてほしい
ああ 抱きしめて 鼓動がひびくほどに
もっとロマンス 激しく感じさせて


ああ あなたに 恋心ぬすまれて
もっとロマンス 私に仕掛けてきて
ああ あなたに 恋模様染められて
もっとロマンス ときめきを止めないで
 

Fragile : Stevie Wonder

 スティングStingの歌ったものはだいぶ前に上げていますが、このStevie Wonderのものを最近よく繰り返し聴きます。ビジターとして歌う力の下げ加減がちょうどいいからでしょう。盲目でありながらずっとパワフルに歌い続けるスティービー・ワンダーが「壊れやすい/儚い」と歌うと、メッセージが重層的に感じられます。

 Fragile(儚きもの)

If blood will flow when flesh and steel are one
肉と鋼が一つになり血が流れても
Drying in the colour of the evening sun
夕陽の色に染まって乾いてゆき
Tomorrow's rain will wash the stains away
明日の雨がその染みを洗い流すだろう
But something in our minds will always stay
しかし、わたしたちの心にはいつまでも残るものがある
Perhaps this final act was meant
たぶんこの最後の手段は予定されていた
To clinch a lifetime's argument
死ぬまで続く議論に決着を付けるために
That nothing comes from violence and nothing ever could
暴力からは何も生まれない、できることは何もなかった
For all those born beneath an angry star
怒れる星の下に生まれた者すべてにとって
Lest we forget how fragile we are
わたしたちがどんなにいかを忘れないようにしよう

On and on the rain will fall
いつまでも雨は降り続ける
Like tears from a star like tears from a star
星の涙のように、星の涙のように
On and on the rain will say
いつまでも雨は言い続ける
How fragile we are how fragile we are
わたしたちがどんなに儚いか、わたしたちがどんなにいか

On and on the rain will fall
いつまでも雨は降り続ける
Like tears from a star like tears from a star
星の涙のように、星の涙のように
On and on the rain will say
いつまでも雨は言い続ける
How fragile we are how fragile we are
わたしたちがどんなにいか、わたしたちがどんなにいか
How fragile we are how fragile we are
わたしたちがどんなにいか、わたしたちがどんなにいか

 

Cajuína : Caetano Veloso


 メロディー、声の運びが気に入り、この一つ前に上げたAve Mariaの次に繰り返し歌って覚えた曲でしたが、短く、口ずさみやすいながら、短すぎて歌詞の意味が分からなかったため、ずっと取っておきました。どの言葉も口に馴染んでいて口ずさんだ回数はもっとも多く、初めて聴いた時からこれまで忘れることはなかったので、昨日、ふと思い立ってグーグル翻訳で理解できるいくつかの言語に訳し、それらをつき合わせると、やっと自分なりに納得のゆく日本語にできました。
 カエターノはいろんな機会にこれを歌っており、アルバムによって印象が違います。ほとんどがメロディーもヘロヘロのとぼけた雰囲気なので、そっちを先に聞いていたら、気に入らなかったでしょう。最初に聞いたこのアルバムのバージョンだけが、キリッとしていてそこが気に入りました。イタリア人の聴衆を前に映画監督フェデリコ・フェリーニを追悼する ライブだったからでしょうか。




Cajuína(カシューの樹)

Existirmos: a que será que se destina?
わたしたちは存在している。それは何のため?
Pois quando tu me deste a rosa pequenina
と言うのは、あなたがわたしに小さなバラをくれた時
Vi que és um homem lindo e que se acaso a sina
あなたがいい男だと分かったし、
Do menino infeliz não se nos ilumina
不幸な男の子の運命を知ると、わたしたちの心は明るくならず
Tampouco turva-se a lágrima nordestina
北東部*で流された涙も霞んで見えたりりしないと分かったから。
Apenas a matéria vida era tão fina
ただ命あるものはとても美しかった
E éramos olharmo-nos intacta retina
だからわたしたちは見つめていた。お互いの傷一つ無い目の奥
*
A cajuína cristalina em Teresina
テレジーナにある水晶のように輝くカシュー
の樹*


*「北東部」:皇帝のいたブラジル帝国が軍事クーデターによって倒され、その後変遷を経て現在の民主的な国になり、亡命した皇帝の子孫も「皇帝継承権保有者」として居住し、「共和制」を支持する人たちの政治運動も行われているそうです。若い頃、軍事政権下でカエターノはロンドンへ亡命していましたが、人種問題、領土問題が根にある紛争がポルトガルの植民地時代、ブラジル帝国の時代からあるようで、「北東部」はこれだけで 紛争の歴史を暗示しているのでしょう。
*「カシューの樹」:現在よく食べられるカシューナッツはこれになる実ですが、そもそもゴムが採れる樹で、これが自生していたアマゾン奥地にアメリカの「ゴールドラッシュ」のように多くの入植者が入り込み、生ゴム生産の巨大な利権を奪い合う紛争が、隣国のボリビアとだけでなく、ブラジルの領土になってからもあったそうです。
*「目の奥」: retinaは直訳なら「網膜」ですが、この単語は他の曲でも使われています。他のミュージシャンも使いやすいのかどうかは知りませんが、直訳の日本語では違和感があるので、こう訳しておきます。
*「テレジーナ」: 地名にあるのですが、「テレサ」という人名をもとに作られているので、歴史を暗示しているのかもしれません。機会があれば、調べてみます。


Sete mil vezes : Caetano Veloso



 このアルバムのSonhos(夢)という曲はこのブログの最初期に上げていますが、この曲はその頃まだYouTubeに出ていなかったため、長く待ち続けていました。若いCaetano のつぶやくような声は聴いて歌う練習をするにはちょうどよく、以後口ずさむ歌の定番です。



Sete mil vezes(七千回)


Sete mil vezes eu tornaria a viver assim
七千回僕は同じ生き方にもどる
Sempre contigo transando sob as estrelas
いつも君とともに星の下に腰を落ち着け
Sempre cantando a música doce
いつも甘い歌を歌いながら
Que o amor pedir pra eu cantar
愛が求めるから、僕は歌う
Noite feliz, todas as coisas são belas
幸せな夜、すべてが美しい
Sete mil vezes, e em cada uma outra vez querer
七千回、一回終わるともう一回愛する
Sete mil outras em progressão infinita
七千回、その度に無限に進む
Quando uma hora é grande e bonita
一時がすばらしく、美しいものであるなら
Assim quer se multiplicar
やはりどんどん増えて欲しい
Quer habitar todos os cantos do ser
人生のすべての歌の中に暮らしたい
Quarto crescente pra sempre um constante quando
三日月はいつまでも変わらない
Eternamente o presente você me dando
永遠にあなたが僕に贈り物をくれるなら
Sete mil vidas, sete milhões e ainda um pouco mais
七千の命、七百万の命、まだそれ以上の命
 É o que eu desejo e o que deseja esta noite
それが僕の望むもの、この夜が望むもの
Noite de calma e vento, momento
静かな夜と風、
De preces e de carnavais
祈りとカーニヴァルの時間
Noite de amor, noite de fogo e de paz
愛の夜、炎と安らぎの夜