Lábios que beijei : Caetano Veloso

Fina Estampa - ao vivo (1995)


  アルバム Fina Estampa はラテンアメリカのスペイン語歌曲をテーマ、素材として取り上げていますが、スペイン語の歌を歌うことで「マーケットの拡大」を狙ったとステージで言ったりしても、それはただの冗談です。オリジナル曲と聞き比べればよくわかりますが、悲しい出来事を明るい口調で歌うスペイン語のかなり俗っぽい歌謡を「神聖」「崇高」と感じられるほど品がよく、エレガントな歌に変質させています。「メタモルフォーズ」こそテーマと思えます。クラッシックの基本をしっかり身につけているチェリスト Jaques Morelenbaum の音楽性が大きな影響を与えたのでしょうが、若い頃のメッセージ性の強いシャウトの合間に見せていた、弱々しく感じられることもある叙情性がこのような「解釈」を可能にしたのでしょう。思いっきり「俗」なものを「解釈」によって「聖」なるもの、崇高なものに変質させる。Labios que beijei (僕がキスした唇)は男っぽいOrlando Silva が歌ったポルトガル語の歌ですが、歌詞は思い切り「女々しい」内容です。普通の歌手が普通に歌えば、おそらく「滑稽」「キモイ」と感じられるでしょう。それがワルツに乗せて歌う Caetano の場合には「ロマンチック」な情景として受け入れ、共感してしまいます。ひとりでいるときに口ずさむとほんとうに浸れます。YouTube にアップされていた Fina Estampaライブのこの部分のクリップは削除されましたが、また復活していました。







Lábios que beijei
僕がキスしていた唇)


Lábios que eu beijei
僕がキスしていた唇
Mãos que eu afaguei
僕が撫でていた手
Numa noite de luar assim,
こんな月の明るい夜に
O mar da solidão bramia
孤独の海が叫び
E o vento a soluçar pedia
すすり泣く風が頼んだ
Que fosse sincera para mim,
僕に誠実でいるようにと
Nada tu ouviste
あなたは何も聞かなかった
E logo partiste
そしてすぐ行ってしまった
Para os braços de outro amor.
新しい恋人の腕の中に
Eu figuei chorando
僕は置き去りにされ泣いた
Minha mágoa cantando
悲しい心を歌いながら
Sou a estátua parenal da dor.
僕は苦悩の永遠の彫像となり
Passo os dias soluçando com meu pinho
ギターですすり泣きながら何日も過ごした
Carpindo a minha dor Sozinho
ひとり苦しさを嘆きながら
Sem esperança de vê-la jamais
彼女にまた会える望みなどなく
Deus tem compaixão desse infeliz
神様、この不幸な男を憐れんでください
Porque sofrer assim
どうしてこんなに苦しむのでしょう
Compadecei-vos de meus ais.
僕の心の痛みを憐れんでほしい
Tua imagem permanece imaculada
あなたのイメージはいつまでも無傷だ
Em minha retina cansada
僕の破れた網膜に焼き付いて、
De chorar por teu amor
あなたの愛を求めて泣いたために
Lábios que beijei
僕がキスした唇
Mãos que eu afaguei
僕が撫でていた手
Volta, dá lenitivo à minha dor
帰ってきておくれ。僕の苦悩を鎮めに

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